ヒト臨床試験について知っておくべきこと
SPIRIT
SPIRITについて
SPIRITは、ヒト臨床試験(ヒト試験)における標準的なプロトコル作成ガイドラインです1)。33項目のチェックリストが用意されており、倫理的な承認から結果の普及方法にいたるまでを詳細に記述することが推奨されています。SPIRITに準拠することは、研究者や主宰者のみならず試験参加者のためにプロトコルの透明性や完全性を示すことになります。「平成29年度機能性表示食品の届出後における分析実施状況及び健康被害の情報収集等に関する調査・検証事業」でもSPIRITの重要性が説かれています。
SPIRITに準拠するには
SPIRITに対応するためには、生理学や臨床、生物統計の専門家が計画に携わることが重要です。また、ヒト臨床試験(ヒト試験)を計画する段階から準備が必要です。以下に、SPIRITへの対応を睨んで試験をする際に、特に気を付けるポイントをお示しします。
1. 研究を実施する体制を明確にする
あなたが実施しようとしている臨床試験に関わる医師や研究者、スタッフなどの役割を事前に明確にしておくことをお勧めします。これに加えて、資金がどのように提供されるかなどの利益相反についても明確にすることが望ましいです。これらを明確にすることで、臨床試験の透明性の確保だけではなく、臨床試験終了後の論文執筆がよりスムーズに進められることになります。
2. 研究の目的を明確にする
あなたが行おうとしているヒト臨床試験(ヒト試験)で何を示したいのかを決めて下さい。そうすれば、どの指標が最も重要なのかが決まります。最も大切な項目 (主要アウトカム) と、主要アウトカムと関連したいくつかの副次的アウトカムを明記にすることが推奨されています。ヒト臨床試験(ヒト試験)を行う際は、どうしても、予算が許す限りたくさんの項目を測定したくなってしまうものです。 せっかく予算をかけるのですから、1つの試験で出来る限り多くの成果を得たいと考えるのは当然のことです。そうした時にも、試験の目的に立ち戻ってみて、たくさんの項目たちに優先順位を付けてください。
3. 統計学的諸問題をどのように解決するか定める
臨床試験を実施する上で、必ず統計学的な問題が生じます。「どのようなデータをどのような形式で収集すれば良いのか?」「試験をする時に何人の人を集めれば良いか?」「どのような統計解析を行えばよいのか?」弊社でもよくお問い合わせを頂きます。 SPIRITでは、これらの統計学的諸問題の対応方法をプロトコルに過程と根拠を事前に明記するように求められます。これらに対応するには臨床試験を計画する段階で生物統計の専門家が試験に参画することが重要です。臨床試験が終わってからデータを相談するという方もいますが、必ず計画段階で相談することで、より良い臨床試験を実施できます。
4. 臨床試験登録機関に登録する
プロトコルが作成できたら所定の試験登録機関に登録し、プロトコルを公開することがSPIRIT準拠の必須事項です。試験終了後に登録することもできますが、事前に登録しておくことで、研究の透明性を主張でき、研究の質を高めることになります。試験登録機関はいくつもありますが、医学雑誌編集者国際委員会 (ICMJE) に承認された試験登録機関に登録しておくことをお勧めします。日本では、UMIN-CTR (http://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm) がICMJEに承認されています。もちろんオルトメディコでは日本の試験登録機関のみならず海外の試験登録機関にも対応いたします。 一度プロトコルを登録すると、その後に行う改変が全て記録されます。試験デザインに関する大きな変更だけでなく、誤字や脱字等の軽微な修正までが記録されてしまいます。登録する前に、しっかりと準備をしましょう。
補足事項
SPIRITの拡張ガイドラインとしてSPIRIT-PROが2018年に公表されました2)。SPIRIT-PROは、患者報告アウトカム (Patient-reported outcome; PRO) を設定した計画を立案する際に、SPIRITでは補えきれなかった部分を補完するかたちで推奨されています。
また、SPIRITは英語のみではなく、以下の言語にも翻訳されています。
- スペイン語 (http://iris.paho.org/xmlui/handle/123456789/18567)
- 中国語
- イタリア語 (https://www.evidence.it/articoli/pdf/e1000148.pdf)
- 日本語 (http://www.spirit-statement.org/wp-content/uploads/SPIRIT-JPN-Translation-Combined.pdf)
- 韓国語 (http://www.spirit-statement.org/wp-content/uploads/2015/08/SPIRIT-2013-Korean-translation-Final-Aug-2015.pdf)
- 参考文献
- 1) Chan AW, Tetzlaff JM, Altman DG, Laupacis A, Gøtzsche PC, Krleža-Jerić K, Hróbjartsson A, Mann H, Dickersin K, Berlin JA, Doré CJ, Parulekar WR, Summerskill WS, Groves T, Schulz KF, Sox HC, Rockhold FW, Rennie D, Moher D. SPIRIT 2013 statement: defining standard protocol items for clinical trials. Ann Intern Med. 2013;158 (3): 200-7. PMID: 23295957
- 2) Calvert M, Kyte D, Mercieca-Bebber R, Slade A, Chan AW, King MT; the SPIRIT-PRO Group, Hunn A, Bottomley A, Regnault A, Chan AW, Ells C, O’Connor D, Revicki D, Patrick D, Altman D, Basch E, Velikova G, Price G, Draper H, Blazeby J, Scott J, Coast J, Norquist J, Brown J, Haywood K, Johnson LL, Campbell L, Frank L, von Hildebrand M, Brundage M, Palmer M, Kluetz P, Stephens R, Golub RM, Mitchell S, Groves T. Guidelines for Inclusion of Patient-Reported Outcomes in Clinical Trial Protocols: The SPIRIT-PRO Extension. JAMA. 2018; 319 (5): 483-494. PMID: 29411037
株式会社オルトメディコでは、ヒト臨床試験(ヒト試験)の計画段階から様々な専門家が参加し、質の高いプロトコルの作成をサポート致します。ヒト臨床試験(ヒト試験)にご興味がおありの方。まずは弊社までお問い合わせください。
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