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2024.12.18

安全性試験における多重性問題

こんにちは。
株式会社オルトメディコ 統計解析課の柿沼です。

安全性試験は多重性を考慮すべきか調査してみました。

  • 学位
    修士 (工学)
  • 経歴
    ~2014年3月 日本大学大学院 理工学研究科 物質応用化学専攻 修了
    2014年4月~ 研究開発部 統計解析課
  • 役職
    課長
  • 実績・得意案件
    シミュレーション
  • 趣味
    旅行
  • 好きな言葉
    無知の知
  • 連絡先
    planning-department@orthomedico.jp

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最近、弊社のお客様から

「安全性試験の場合は多重性をどのように考慮すれば良いのか?」

という質問をちらほら受けます。

そこで、安全性試験における多重性問題の考え方をまとめてみました。

1 ガイドラインを確認してみる

ひとまず、統計解析に関するガイドラインを網羅的にチェックしてみました。
チェックしたガイドラインは、
ICHE9 (1998)、CPMP (2002)、CHMP (2017)、FDA (2022)
の4つです。

ICHE9 (1998) は、臨床試験の統計解析に関する原則をまとめたガイドラインで、
他の3つは臨床試験の多重性問題に特化したガイドラインです。
この中から安全性に関する記述をピックアップしていきましょう。

ガイドライン 該当するセクション 安全性の多重性に関する記述
ICHE9 (1998)
[臨床試験のための統計的原則]
VI. 安全性及び忍容性評価, 6.4 統計的評価 仮説検定を用いる場合、第1種の過誤を勘案して多重性を統計的に調整することは適切ではあるが、通常は第2種の過誤により注意を払うべきである。多重性の調整を行っていない場合、統計的に有意となった結果の解釈には注意すべきである。
CPMP (2002)
[POINTS TO CONSIDER ON MULTIPLICITY ISSUES IN CLINICAL TRIALS]
5. Adjustment of elementary hypothesis tests for multiplicity – when is it necessary and when is it not?, 5.4 Multiplicity in safety variables 副作用の場合、有意差 (相対リスク又はリスク差として表される) は、観察されたP値に関係なく、重篤度、重篤度又は転帰に応じて懸念を生じさせるため、P値の価値は極めて限定的である。 治験薬による潜在的なリスクを示すフラグとして、多数の統計学的検定手順が使用される場合、一般的に多重度の調整は安全性の検討にとって逆効果であると言える。このような状況では、単一の仮説に対する第1種の過誤をコントロールできないことは明らかであり、このような結果の重要性と妥当性は、薬剤の薬理学に関する予備知識に依存する。
CHMP (2017)
[Guideline on multiplicity issues in clinical trials]
5. Adjustment of elementary hypothesis tests for multiplicity – when is it necessary and when is it not?, 5.4 Multiplicity in safety variables 治験薬に起因する潜在的なリスクを示唆するためのフラグとして、多数の統計学的検定が実施される場合、一般的に多重性の調整は安全性の検討にとって逆効果であると言える。同様に、このような状況では、単一の仮説に対する第1種の過誤のコントロールができないことは明らかであり、「有意な所見」の重要性と妥当性は、その薬剤の薬理学に関する予備知識によって異なり、更なる調査が必要となる場合もある。
FDA (2022)
[Multiple Endpoints in Clinical Trials]
II. BACKGROUND AND SCOPE 試験で評価されるエンドポイントが複数ある場合に多重性を考慮しないと、薬剤の効果に関して誤った結論を出す可能性が高くなる。多重性に関する規制上の懸念は、主に、医薬品の承認やFDA承認表示における主張を裏付ける有効性を証明することを目的とした臨床試験の評価において生じるが、この問題は医薬品開発プロセス全体の試験において重要である。例えば、安全性の結果が仮説検定によって評価される場合、本ガイダンスに記載されている多重性の考慮の対象となる。正式な統計的検定のために事前に設定された仮説の一部ではない安全性解析の多重性の問題は、本ガイダンスの範囲外である。

こんな感じです。
結構なボリュームになってしまいましたね。

ちょっと整理してみましょう。

2 まとめ

ICHE9 (1998)では、
「安全性および忍容性の変数に対して検定を用いる場合,
通常は第1種の過誤よりも第2種の過誤により注意を払うべき。」
ということが記載されています。

第2種の過誤というのは、効果があるのに有意差がないという状況です。
有効性試験の観点では、消費者の機会損失につながるものです。

  検定結果
有意差あり 有意差なし
真実 効果なし α
(第1種の過誤)
1-α
効果あり 1-β
(検出力)
β
(第2種の過誤)

安全性試験では、有効性試験よりも第2種の過誤に注意を払うということです。
(有効性試験では、ないがしろにしてOKという意味ではありません。)

何が言いたいのかというと、
しっかり有害事象を検出できる症例数で安全性試験をしましょうということです。

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次に、CPMP (2002)、CHMP (2017)、FDA (2022) で言いたいことは共通しており、「安全性の変数であってもその検定結果が承認やlabeling claimに反映される場合には
主要変数と同様に多重性の問題を扱うべき。」
ということです。
つまり、有効性を主張しなければ、有意水準や有意確率を調整する必要はないということですね。

まとめると、安全性試験は十分な症例数で実施することが重要であり、
有効性を主張しないかぎり多重性を考慮する必要はなさそうという調査結果でした。

ということで疑問は解決できたでしょうか?
こんな感じで新しいメルマガを書いてみました。
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3 参考文献

厚生労働省. ICH-E9 臨床試験のための統計的原則. (平成10年11月30日医薬審第1047号) (2024年10月10日アクセス可能: https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf)
Committee for Proprietary Medicinal Products (CPMP). Points to consider on multiplicity issues in clinical trials. (2002/9/19) (2024年10月10日アクセス可能: https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/points-consider-multiplicity-issues-clinical-trials_en.pdf)
Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP). Guideline on multiplicity issues in clinical trials. (2017/3/31) (2024年10月10日アクセス可能: https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/draft-guideline-multiplicity-issues-clinical-trials_en.pdf)
Food and Drug Administration (FDA). Multiple endpoints in clinical trials: Guidance for Industry. (2022/10/21) (2024年10月10日アクセス可能: https://www.fda.gov/media/162416/download)

株式会社オルトメディコ
研究開発部 統計解析課 柿沼 俊光

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