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2025.01.16

QOL評価の統計学的留意事項

こんにちは。
株式会社オルトメディコ 統計解析課の
柿沼です。

QOLを評価するヒントをまとめました。
  • 学位
    修士 (工学)
  • 経歴
    ~2014年3月 日本大学大学院 理工学研究科 物質応用化学専攻 修了
    2014年4月~ 研究開発部 統計解析課
  • 役職
    課長
  • 実績・得意案件
    シミュレーション
  • 趣味
    旅行
  • 好きな言葉
    無知の知
  • 連絡先
    planning-department@orthomedico.jp

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QOL評価を主要アウトカムに設定することって多いですよね?

でも、皆が使っているからという理由で無暗に採用するのも危険かもしれません。
そんなQOL評価についてまとめてみました。

1.そもそもQOLとは?

QOL = Quality of life (クオリティ オブ ライフ)

欧州医薬品庁の医薬品委員会 (CHMP) によると

QOLは、日常生活、身体的、精神的、社会的な機能であったり、病気とその治療の影響についての試験参加者自身による幸福度の報告である。QOLのうち、通常医薬品開発を目的とした臨床試験では、健康関連QOL (Health Related QOL; HR-QOL) を考える。HR-QOLの定義は、1948年に世界保健機関 (WHO) によってなされた健康についての定義「単に疾病がないということではなく、完全に身体的・精神的及び社会的に満足のいく状態にあること」に基づいている。

ということらしいです。1948年にWHOが定義したものに基づいているようです。
ちなみにQOLのように試験参加者自身が報告するアウトカムをPROといいます。

PROって聞いたことありますか?
Patient Reported OutcomesでPROです。
試験参加者の症状やQOLに関して、自分自身で判定し、その結果に医者をはじめとした他の者が一切介在しないという評価方法と定義されます。

こんなイメージです。

ちなみに試験参加者を募集する会社もPRO (Patient Recruitment Organization) って呼ぶそうです。取引のある治験施設支援機関の方が言っていました。
なので、弊社もPRO業務をやっていることになりますね!!

PROには、QOLを測定するアンケートのようなものだけでなく、感冒症状や排便日誌のような参加者自身が回答するものも含まれます。どんなものがあるかというと・・・

包括的尺度 SF-36、EQ-5D
疾患・症状特異的尺度 疼痛 VAS、MPQ、painDETECT
関節炎、腰痛 WOMAC、ODI、JOABPEQ
がん医療・緩和ケア BPI、EORTC-QLQ、FACT-G
睡眠 PSQI、ESS 
関節リウマチ BASDAI、ACR core setの一部、DAS28の一部
COPD、喘息 SGRQ、AQLQ 
うつ症状 HADS、BDI、SDISS

あれやこれや良く見かけるものがありますね。
これらはみんなPROです。

2.QOLを臨床試験で評価する意義

次にPROやQOLをアウトカムに設定する意義をみていきましょう。
いわずとしれたガイドライン「ICH-E9」を見てみます。

II. 臨床開発全体を通して考慮すべきこと, 2.2 試験で扱う範囲, 2.2.2 主要変数と副次変数
主要変数 (「目標」変数、主要評価項目ともいう) は、試験の主要な目的に直結した臨床的に最も適切で説得力のある証拠を与えうる変数であるべきである。主要変数は通常ただ一つにすべきである。ほとんどの場合、検証的試験の主要な目的は有効性に関して科学的に説得力のある証拠を提示することにあるため、主要変数は、通常有効性に関する変数となる。安全性及び忍容性は常に重要な問題であり、ときには主要変数となりうるものである。生活の質 (QOL) 及び保健経済に関する測定値も、主要変数となる可能性がある。主要変数の選択には、開発に関連した研究領域で一般に認められている規範と基準を反映させるべきである。先行研究又は公表論文で使用された実績のある、信頼性及び妥当性の確立した変数を使用することが薦められる。主要変数は、選択基準と除外基準によって規定される患者集団において、臨床的に適切で重要な治療上の利益に関する妥当で信頼のおける指標であることが十分に証拠づけられているべきである。被験者数の見積もりに用いる変数は、通常は主要変数であるべきである (3.5節参照)。(以下、省略)

つまり、

科学的な説得力があれば、PROを主要なエンドポイントと設定することは可能である

ということですね。
これで、安心してアウトカムに設定できますね。

3.QOLなどのPROを準備する流れ

みなさんは、アンケートのようなPROをどのように探していますか?
他社が使用しているものを真似する場合もあると思いますが、差別化を図りたいなら、いろいろ探しますよね。

とくに私たちは、日本人の参加者に対する調査票が必要なので日本語でバリデーションされたものが理想ですが・・・・・

なかなか探すのも根気がいります。そこで、以下のようなフローで探すのがオススメです。

また、探すときはePROVIDE (https://eprovide.mapi-trust.org/) もおすすめです。

ちなみに弊社は、介入がなくても人を集めてアンケート調査をすることができます。
そのため、新しいアンケートを開発したい時もオルトメディコのサービスを使って実現できてしまいます。そんなことを考えている方は、他社に先を越される前にオルトメディコに問い合わせください

4.データ収集における留意点

QOLを評価する上で重要なポイントがデータをどのように収集するかです。
施設が多いほど、QOLの測定は難しくなります。すべての施設担当者にトレーニングする必要があるからです。

施設担当者が試験参加者に適切に指導できるようなトレーニングプログラムが必要です。
しっかりトレーニングすることで、QOLの測定精度を向上させることができます。

どんなトレーニングが必要なのかは、以下の通りです。

調査票の入力手引き、記入方法の作成 帳票内に記載方法ページを作成する。
施設用の記載方法、被験者用の記載方法をそれぞれ作成する。
帳票の版権元が作成した説明資料を配付する。
施設担当者が被験者へトレーニングする方法をまとめる。
マニュアルやトレーニング資料などを用いた説明 記載上の手引きの作成、Site training、Investigator MeetingおよびCRC trainingにおける説明 (各分野の専門家やモニターからなど) を行う。
施設担当者を通じて被験者へトレーニングを実施 被験者に対しては、施設担当者 (測定者) がトレーニングを実施する。トレーニング後は署名をもらい、記録が残るようにする。
試験内で共通の資料を用いて施設担当者から説明する。
VASの線の引き方について、施設担当者が指導するよう依頼する。
その他  run-in期間 (慣らし期間) を設定して、調査票の記入方法を練習させる。
映像を作成して、トレーニングに利用する。
Q&A集やビデオを作成する。

なかなかハードですね。これをヒト臨床試験に関与する医療従事者に徹底的にレクチャーしなくてはならないのです。しかも、単に測定方法を教えるのではなく、試験参加者 (被験者) への伝え方までレクチャーします。

ここをないがしろにすると測定誤差が大きくなってしまい介入効果へ悪い影響が出てしまいます。

アンケートをアウトカムに設定するというのはこういうことなのです。

でも、安心してください!!オルトメディコに依頼すればすべて解決します。

5.統計解析における留意点

最後に統計解析のポイントです。
基本的には、生理学的なアウトカムなどと同様です。そのため、そこまで話すことはないのですが、ICH-E9はしっかり見直しておきましょう。

他に考えられることはドメインの解析についてですね。

上の図のようにアウトカム (エンドポイント) に設定できるか検討します。
つまり、特定のドメインに絞って有効性の判定を行うにはそのドメインが独立して用いることができるように開発されている必要があるということです。開発論文をチェックしてみましょう。

また、当たり前ですが、複数のドメインがエンドポイントである場合は、多重性に注意しましょう。

6.まとめ

というわけで、今回はQOL評価についていろいろまとめてみました。
いかがでしたか? 簡単そうなQOL評価が難しそうに感じましたか?

そうなんです。難しいのです。
だからオルトメディコが存在しているんだなーってしみじみ思いました。

みなさん!QOLを評価する時は、まずオルトメディコに問い合わせをしてみましょう。
問い合わせするだけでも安心すると思いますよ。

統計解析についても問い合わせしてください。
お問合せお待ちしてます。

7.参考文献

【参考文献】
厚生労働省. ICH-E9 臨床試験のための統計的原則. (平成10年11月30日医薬審第1047号) (2024年10月10日アクセス可能: https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf)
European Medicines Agency, Reflection Paper on the Regulatory Guidance for the Use of Health Related Quality of Life (HRQL) Measures in the Evaluation of Medicinal Products (2024年10月10日アクセス可能: https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/reflection-paper-regulatory-guidance-use-health-related-quality-life-hrql-measures-evaluation-medicinal-products_en.pdf)
厚生労働省. 健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~. (平成26年版厚生労働白書) (2024年12月10日アクセス可能: https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/)
Food and Drug Administration, Guidance for industry: patient-reported outcome measures: use in medical product development to support labeling claims. 2009. (2024年10月10日アクセス可能: https://www.fda.gov/media/77832/download)

株式会社オルトメディコ
研究開発部 統計解析課
柿沼 俊光

〒112-0002 
東京都文京区小石川1丁目4番1号
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